ハンサムボーイ

penned by カズー

バスを釣った初めてのハトリーズはブッシュペッカー。
1989年、とあるダム湖の岩盤沿いをゆっくり丁寧にスライドさせていた時の出来事。
サイズは関係なく、とにかく嬉しい一匹。

のびやかで美しい動きに心を奪われたのはインナーハンドW.B.。
軽い入力で驚くほど長いスライドができ、操作する楽しさに酔いしれた。

ほかにもいろんなタイプを楽しんできたけれど、とくに出番が多かったのは、名だたるウッドの名作を差し置いてハンサムボーイ。
ハトリーズ初のプラスチックバージョン。
四兄弟のペンシルタイプ。

当時の釣りはオカッパリがメインだったので、ロストしても気軽に補充できることが多用した理由の一つだったけれど、歯形や傷が増えていくにつれ愛着が増し、対岸の木に引っかかったのを数時間シェイクして外したこともよい思い出。

ロッドとラインを最適化すれば、ゆったりとしたロングスライドから小刻みなスライドまで、ハトリーズの名に恥じない本格的な動きが意のままに操作でき、飽きることなく使い続けることができた。
ほかのペンシルに比べて先端がずんぐり丸く水押しに長けていて、頭の背後が窪んだ独特の形状がターン時の複雑な水流や泡出しに寄与していると感じている。

初めて50オーバーをもたらしてくれたプラグでもある。
場所は大阪泉州の天上坊池。
周りを木々に囲まれて水面は水草で覆われる緑豊かな野池だった。

夏の終わりの夕マヅメ。
水面に射す光量が程よい加減になった頃合いに訪れて、まずはスイッシャーで沖に広がるヒシモの絨毯の縁沿いを通すが無反応。
しばらく場を休ませつつハンサムボーイに付け替える。

狙いは、直線状に続くヒシモのエッジラインの途中に一か所だけ存在している60センチくらいの小さなエグレ。
その少し先に着水させ、ショートスライドを繰り返し、ヒシモのエッジに沿わせながら近づける。
ロングスライドで軌道を変えてエグレ内に侵入させたまさにその時、水しぶきとともにプラグが消える。
狙い通りのスーパーストライク!

瞬時に感じる今までに体感したことのない重い引き。
2500Cに巻いた8lbラインがキンキン鳴り、ロッドがのされたままひたすら耐え続ける。

その後の記憶の断片は。
水面に出て来た巨大な頭。
別の魚種かと錯覚するほどの獰猛な顔つき。
プルプル震える手でつかんだ下アゴの肉厚の触感。

魚体を水につけたまま、納得のいくまで眺めてからリリース。
空はうっすら暗くなり始めていた。

満たされました。

そんな思い出のフィールドでもう釣りをすることは叶わない。
埋め立てられ住宅が立ち並び、池を見ることすらできなくなってしまったから。
けれど、このハンサムボーイを手に取り眺めていると、緑に囲まれた池の全景や、広大なヒシモのリリーパッド、水面に群れる小魚に何度もアタックするバス。
当時の光景が瞬時に想い浮かぶ。

ボディーに残った歯形と共に当時の思い出も刻み込まれている。
そんなプラグです。



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