再会

所長と東海地方に向かう。
今日はOと釣りをするのだ。

Oは大学時代の釣りサークルの後輩で、いっしょにトップでイトウ釣りをしたり、渓流でニジマスを追いかけたりして遊んだが、彼が就職したときに大阪に遊びにきてくれてからは長らく音沙汰なく疎遠になっていた。

そんなOからの久しぶりのメールは、『ハトリーズとぼく』への寄稿の呼びかけに対してだった。
メールには、仕事で北海道から本州に移り10年近く釣りから遠ざかっていたが、2年ほど前にバス釣りをはじめたのだとあった。
あるときOがなんとなくInstagramで検索したら、僕がホームページで寄稿を募集していて、釣りを再開してから気に入って使っていたハトリーズ(インナーハンド)がテーマだったのでメールしたのだという。

寄稿集の掲載のやり取りのなかで「また釣りにも行こう」とは言っていたものの、たまたま所長をあわせた3人の予定がはまって今日になった。

Oが案内してくれた野池の水は濃く透きとおった緑色をしていた。
田んぼや畑が広がる平地を流れる小さな河川をせき止めた池は、あたりを林に囲まれており、岸際はクズなどの植物の茂み、樹木のハングの影、シャローには葦の一帯も見え表情豊か。
水位が高いのは先週通過した台風の影響だろうか。
はじめて訪れる雰囲気たっぷりのフィールドにハイテンションになって、再会のあいさつもそこそこに釣りをはじめる。

Oはトップウォータージャンキー・ベッドバグを投げている。
このプラグだけで30匹ほどのイトウを釣り上げていて、90アップをキャッチしたこともあるらしい。
黒一色のボディには無数の細かい歯形がついている。

「この時期にはどんなタイプのトップが効くんですか」

「・・・・・・」

40歳を手前にバス釣りをはじめたばかりのOの質問は鋭いが、それに応えられるものをなにも持っていないことに気づく私たち。
釣れる気まんまんでひとまわりしたが、バスからの反応はなかった。

どんな釣り場か分からなかったし、かといってあえて事前に聞くこともせず、今日はいつもとボックスを変えて色々なプラグを持ってきていた。
期待の1周目から2周目に入ってつぎつぎとルアーを変えながら試していく。

ロジャース(Rogers)のクロウパップ(CRAW PAP)。
ボーマーベイトのようなバックワードタイプで、金属リップのプラスチックボディというスペックはフレッドアーボガストのマッドバグと共通するが、あちらのリップはアルミ製でこちらはより重たい真鍮製。

去年、なにかにきっかけでこのプラグのリアフックにラインを結ぶと、ただ巻きでヘコヘコヘコヘコと水面を泳いでくることを発見し、以来うれしくなって皆に見せびらかしながらときどき投げている。
所長は「釣れそうにない」というが、僕はめっちゃ釣れそうな気がする挙動。
まあ、僕も自分で発見したからうれしくて使っているが、他人から勧められたら「それで釣っておもしろい?」などと言っていると思う。

岸際には葦が生えて、浅瀬となった一帯には成長途上のヒシモがぱらぱらと散らばっている。
葦際にクロウパップを投げてヘコヘコ引いてくると、プラグの近くでもわんと大きな波紋が起きた。

なんかきた!
と声を出してそのまま巻いてくると

じゅぼ!

吸い込まれたのを確認してリールを巻いた・・・つもりだったが、プラグはするっと抜けて戻ってきた。

バスがいます!

というOの声でそちらを見ると、でかいでかい。
50は確実、55くらいありそうな立派なブラックバス。
うーん、どうしたらよかったのか。

そのあと違う池で釣りしてみんなでお昼を食べたころに雨が強くなってきて、最初に池に戻ったころにはなかなかの降り方。
気持ちが萎えかけていると所長が「いきましょう」と言うので、さらに2周した。
途中、お昼のカレーが自分だけに効果的に働いてお腹が痛くなり急ぎコンビニに走ってもらったりしつつ、Oに2度のバイトがあったが乗らずでこの日の釣りは終わった。

「先週の台風の大雨でバスが沈んだかな」

近況を話したり聞いたりしていると、10年という歳月のあいだにお互い遠いところまできたような気もするし、一日一緒に釣りをしていると、出会った20年前のころからなにも変わっていないような気もしてくる。
この釣りを続けていてよかったと思った。

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