湖北へ

家族で琵琶湖旅行にいくことになった。

ホテルは湖北エリアの、湖にほど近いところを予約した。
目の前にはプライベートビーチがあるらしい。
それは釣りでいうところのサーフであろうと。


アユが産卵のために湖から河川に入るこの時期、川や河口での釣りは規制されているが私のビーチはエリア外だった。
そういえばむかし、この近くで行われた「ケタコ(ハス)釣り大会」に連れていってもらったことがある。
少し時期は遅れるもののハスも釣れるかもしれない。

5年前の沖縄旅行のときに買ったアブの6.6フィート、ライトアクションの4ピースロッドを持っていくことにした。
リールは古いツインパワー。
ちょっと太いかと思いながらそれしかなかったので8lbのナイロンラインを巻く。

遠浅の水辺を広く探るためにミノーとスプーンを2個ずつくらい、と思っていたけど、ルアーボックスを眺めていたら「あんなことやこんなことも起こるのでは・・・」という妄想が広がってきて、渓流ボックス2つがいっぱいになった。

初日は雨まじりの荒天。
琵琶湖博物館を見学してから湖北を目指す。
博物館では水槽エリアになってから子どもらの集中力が切れ、後ろ髪引かれる思いで足早に通りすぎる。
琵琶湖は固有種めっちゃ多い。
じっくり眺めたかった。

アユモドキもいた。かわいい。

それから琵琶湖大橋を渡って湖西へ。
バイパスは使わずお昼を食べるお店を探しながら湖岸に近い道路を北上する。
同乗者との折り合いがつかず結局マクドナルドのドライブスルーになる。

旅の前にはチャンスがあればここにもあそこにも行ってみたいと思いながら、なかなかままならない。
それでも湖岸沿いの道に昔ながらの川魚屋を見つけてささっと入り、小鮎といさざの佃煮が100グラムずつ買えた。

琵琶湖固有種のいさざの佃煮。苦みと、頭部のざくっとした食感。うまい。

竹生島に渡ってみたかったけど荒天でフェリーは欠航。
そのままホテルに向かって、ビーチで水遊びをすることにした。

今年は夏が異様に長かったので9月下旬でも湖の水はあたたかかった。
サンダルで済ませるつもりが自分も着替えて泳ぐ。
もちろんサーフの偵察も兼ねて。

みんなでひとつしかないゴーグルをつけた上の子が、「魚が泳いでる!」と騒ぎながら、水中で虫捕り網を振り回している。
一刻も早く貸してほしいけど、じゅんばんが回ってこない。
つぎは下の子。
そのあとにようやく私。

80cmほど深さのある湖底をみると、ときおり視界に魚の群れが入る。
オイカワ?ハス?まあまあの大きさがある。
動きが速いのでなかなか姿を捉えられない。

そうして夢中で見ているうちに、紛れもなくブラックバスがきた。
固定の石ころを足でかき回して砂けむりをあげると数匹のバスが集まってくる。
サイズは10~20cmくらいか。
釣り場としてのイメージが沸いてきた。
テンションが上がる。

夕方の湖岸に立つ。最初はDコンタクト。
よく飛んで沈んで泳いで、サーフでも勝手がいいヘビーシンキングミノー。
沖縄でも活躍した。

数投したところで、上の子が「僕もやりたい」と近づいてきた。
うぐぐ。
ここは仕方なくモードを切り替える。

初めてルアー釣りをする彼にシンキングはリスキーだと思い、それに投げても巻いてもルアーの重みが感じられるように、ズイールのチマチマリスクに結び変えた。
98年製。
むかしズイールのルアーはたいへんな人気で、父さんは高校生のときハガキで抽選に応募して・・・といったことは彼にはまったく関係がない。

投げ方、リールを巻く速さなど教えながら釣る。
届く距離の水深は2メートルもない。
そこから徐々に浅くなって、岸から5メートルくらい沖からゆるい駆けあがりになる、さっきバスを目視したあたりが狙い目になりそう。

テンプラになったり、叩きつけたり、お決まりをなんどかやってキャストが少しさまになってきたところで、「きた」と子どもが言って、水中でぎらぎらと銀鱗が光っている。
そのままのテンションで巻くように伝えると、巻きすぎて竿先20cmのところでピチピチとバスが暴れている。
そうなるよね。
口に指を入れてグッと持つように伝え、はい、チーズ。

すごい、と興奮する父に「僕ってすごい?」と聞く子ども。
うん、いや、まあ、そうかもしれんけど、なんというか色々な偶然が重なってこうして初めてのバスが釣れたという、この「起こったこと」がすごいのであって、たとえば30年前にバス釣りをはじめたお父さんが最初の1匹を釣るまでにどれだけ野池に通ったかことか。
といったことは関係がないよね。
君はすごい。
野球少年の彼は「城島みたいに釣りを趣味にしようかな」などとつぶやいている。
まあよかった。

このあと自分もリスクで1匹釣って、下の子にバス持ちをさせてみた。
リスクはすごい。

夕飯を食べて車で近くの温泉に行って、ホテルの戻ってあとは寝るだけ。
というところでもう一度サーフに向かう。
ホテルの部屋から徒歩1分。
向かわない理由がない。
月明かりの下、ポッパー、ミノー、バイブレーションなど投げたが何の反応もなかった。

翌朝、まだ暗いうちからひとり起き出してサーフへ。
今日は自分の釣りをするのだ。

少し風があるがトップで釣りたい。
ときおり、いくつもの細かな波が水面を駆けるようにあらわれては消える。
小鮎の群れだろう。

LOTのBT75を結ぶ。
ポリカーボネイドのカップが付いた細長いノイジーで、スプラッシュを上げながらキレのよいロールでフラッシングする。
すぐに「ばしゃ」と反応があったが一瞬乗ってすぐばれた。

うぉー、でたー。
どきどきする。

ほどなくして再びバイト、今度は釣れた。
小さいけどうれしい。

LOTのBT75とバス。

湖岸を歩きながら広く探る。
たまにバイトがあるが乗らない。
2回追い食いしてきたやつもいたけどかからなかった。

しばらく歩くと、沖を広いウィードが覆うようになった。
その帯の端にぎりぎり届くくらい。
こうなるとピンポイントのプラッギングをしたくなる。

ズイールのチマチマプロップに変えて一投目。
ウィードの際にキャストし、ポップ1発でルアーが消し込んだ。
狙い通り!

ズイールのチマチマプロップとバス

そのあとは意外とバイトが続かず、夜明けを迎える。
赤からオレンジへ、刻々と光りが色を変えていく。
日の出を目当てにキャンパーたちも沖を見守ってる。
きれいだなぁ、と思いながら必死にキャストを繰り返す。

明るくなってバイトが遠のいたのでミノーに変える。
短い自分の釣りの時間、今日は柔軟に釣りをするのだ。

着水したあとは糸を張ってトゥイッチをして、それなりの水深までミノーを潜らせる。
そのあとはトゥイッチとただ巻きを織り交ぜながら引いてくる。
クックッとロッドをあおると、ぐう、とティップが重たくなる。
そのままの姿勢で合わせる。

けっこう引くので良いサイズ?と思っていたらピカピカに光る魚体。
わー、やった、ハスだぁ!

ホットショットのミノーとハス

日程だけ決まっていてどこに行くかは考えてなかった。

ふと思いついて琵琶湖、それも湖北のホテルにしたのは、ケタコ大会に参加した記憶がそうさせたのかもしれない。
このあいだ『フライの雑誌』に、釣り場まで行くのがしんどいので家の近くに水辺が欲しいといった文章を書いたが、それを実践するような旅行にもなった。
こないだまで必死にやっていた仕事も湖北に縁が深かった。

などいろいろ、長いスパン、短いスパン、絡まりあって円が閉じたような旅行だった。
と、ぜんぜんそんなつもりはなかったけど、今になって思う。
「起こったこと」がすごい。

それとルアーフィッシングは楽しくて、琵琶湖はとてもいいところだ。

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