ソリッドファンデーション・チャギーポップ

penned by 日高シカ

ソリッドファンデーション・チャギーポップ


正直言えばバスプラグというものがあまりにも魅力的なので、ライフワークとしてのバス釣りが成り立っている節がある。

裏を返せばバスプラグに刺激がなく興奮を覚えなければ、ここまでバス釣りに没頭していないだろう。
子供の頃から途方も無い数のバスプラグに触れてきたが、いまだに感情を揺さぶるバスプラグとの出会いがある。
昨年、SOLID FOUNDATIONのCHUGGY POPを手にし、釣りに通う理由がまた一つ増えてしまった。

詰まるところ、私はバスプラグに駆り立てられてブラックバスを追いかけ続けている節がある。

メガバス・POPX

penned by ふくちょー

メガバスのPOPX

初めてバスを釣ったハードプラグ

私が人生で初めてハードプラグでオオクチバスを釣ったのは、2011年8月のこと。

当時の私は大学1年生だった。
場所は北関東の山間部にあるダム湖である。
現在は見る影もないが、この当時はまだ「関東地方に残された楽園」と評されるほど平易な釣り場だった。

前の晩にバス釣りの入門書を一読し、エントリーモデルのスピニングタックルを手に夜明けの湖畔に臨んだ。
何もわからない私は、ただ沖にポッパーをキャストし、波紋が消えては1回ポッピングして、また波紋が消えるのを待つというアクションを繰り返した。
それで扇状に探ったら10mばかり横に移動という、非常に気の長い釣りである。
それでも、8時前に推定40cm強の良型を1尾だけ釣り上げた。

当時の痩せ型だった私が、か細い腕に立派な体躯のバスを不恰好に持ち、骨ばった顔に満面の笑顔を浮かべる写真が今も実家に飾ってある。
写真を撮った老父曰く、被写体の会心の笑みをカメラに収められたことが自慢らしい。

その時のポッパーこそ、メガバス社のPOPXであった。

11月下旬の晴れた夕刻

その時の体験から今日まで長い年月が過ぎたが、今でも一番好きなプラグはPOPXである。

腕の拙い私にとっては、たとえ小バスであっても釣り上げた一尾一尾が忘れがたい思い出なのだが、特に思い入れ深い一尾がいる。
それは本格的にバス釣りを始めて2年目、11月下旬の晴れた夕刻のことだった。

場所は先述のダム湖。
増水が進んで足場も満足にない状態でのオカッパリである。
私は老父と共に本流筋の最上流部にエントリーしていた。
表層水温は10度ほどで、水の透明度が非常に高かった。

昼過ぎからはじめたものの当たりはなく、陽も傾いてきたので、そろそろ納竿しようという話になった。

私は復路で要所に絞ってPOPXを投げることにした。
「この水の透明度で魚を騙せる可能性があるならば水面を使うルアーの他ない」と考えたためである。

ヒットしたのは副ダムから川筋を下って2つ目の曲がり角に差し掛かったところだった。
「川筋」といっても、ルアーをフルキャストせずとも容易に対岸まで届く川幅である。

このスポットには、川筋の中心部に2つの大きな沈み岩がある。
私は2つの沈み岩の内、下流側の岩へアップクロスでキャストし、岩の頂点より1m足らず下流の線にPOPXを通した。

着水後、最初にこのルアーで出せる最大の音を一度奏でてバスの捕食音を模倣した。
続けて、小魚が湖面を跳ねまわるようなイメージで、一度目よりも弱い音を連続で奏でると、1.5秒くらいポーズする。
冷水で動きにくいだろう状態のバスに、捕食行動の決意を固めさせるためのやや長めの間だった。

小ポップとポーズを3度繰り返してPOPXが足元まで辿り着き、ピックアップ前に最後の間を与えた時だった。
黒い影が上流から走り寄り、ルアーと砂地の湖底の間20cmの空間に潜り込むと、間を開けずにPOPXを引っ手繰った。

間髪開けずに竿を上げると、その先に体長30cm弱のオオクチバスが付いていた。

「魚を騙す絵図」

長さも太さも、大した型ではない。
しかし、私にとってはキャストからバイトまでの一連のプレゼンテーションにおいて、具体的な「魚を騙す絵図」を脳裏に描き、その通りに釣り上げた初めての一尾であった。
そして、着水からヒットまでの経緯を目視でき、当時の私の技術と経験値でも期待通りの動きを出すことができるまで使い込んだこのルアーだからこそ、出せた一尾だったと思っている。

私に一つのルアーを使い込むことの大切さを教えてくれたのも、POPXだった。



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O.S.P・ラウダー70

penned by fraternity

僕は世間でいう「トッパー」ではない。
どんなルアーで釣るかよりも、「今日の魚はどうすれば釣れるのか?」を考えて釣りたい。
好きなルアーを挙げるなら、スピナーベイトが一番で、次いでフローティングのジャークベイト、そしてディープクランク。
もちろん、状況次第ではライトリグも使う。
表層からボトムまで、あの手この手で魚を追いかけるのが楽しいのだ。

そんな僕にも、気づけばつい頼ってしまうトップウォータープラグがある。
それが、「ラウダー70」だ。

O.S.Pのラウダー70

ラウダー70は、並木敏成氏が代表をするO.S.Pから生まれたポッパーだ。
70mmで12g、ミディアムパワーのベイトタックルでちょうどいい感じに扱える。
特徴的なのがそのカップ形状。
上端が少し伸びており、水を掴み「ボワン」と、低く太い音を響かせる。
その響きは水に溶け込みつつもどこか曖昧な違和感を残す。
それがバスにどう作用するのかはわからない。
でも、彼らがその響きに惹きつけられる瞬間があることを知っている。

このルアーに助けられた、とある夏のできごとを紹介する。

山間部の小さなリザーバー。
日差しは肌を突きさし容赦なく水分を奪う。
草木はこんがりと日焼けし、岸際の水は鈍く淀んでいた。
それなのに水は限りなく透明に近かった。

こんな状況のバスはどうしても気難しく、釣りは難解になる。
どんな精巧なライトリグを繊細に動かしても「またそれか」「もう飽きたよ」と、目を向けてもくれない。

そんな中オカッパリをしていた僕は、なんとなく「もしボイルがあったら試してみよう」とラウダーを結んだ。

試しに手前10mほどにキャストし、ボワン、ボワンと音を出してみる。
すると、下流からバスの群れが遡上してきた。
驚いたことに、彼らはラウダーをぐるりと囲んだ。
その異様な光景は「覗くな」と書かれた穴の周りにたむろする野次馬のようだった。

ラウダーが手前に寄り過ぎたので、回収した。
するとバスたちは姿を見られていたことに気付き、一目散に沖へ逃げていく。
僕は「その反応が普通だよな」と胸のつかえがとれた。

しかしラウダーへの期待に抗えなくなった。
バスたちの上流側やや岸よりに再びラウダーを遠投した。
ラインを水に馴染ませ、ボワン、ボワンと音を響かせる。

沖へ逃げたバスたちが反転し、ルアーへと向かっていくのが見えた。
まるで、引力。
ラウダーの響きにはそんな作用があるのか。
バスたちは僕から遠ざかり、やがて姿は見えなくなった。

ラウダーが作る波紋だけが彼方に見える。
信じて、響かせ続ける。

ステイ中にラインがスッ…と沖へ動いた。
フッキングを決める。
ラウダーが奏でた響きのように、魚の手応えもまた、太く重かった。
ラウダーに惹きつけられ、禁断の穴を覗いてしまった魚は2kgにせまる魚だった。

繰り返すが、僕はトッパーではない。
でもラウダー70は、いつも手元にある。
もしかしたら僕もまた、その引力に惹きつけられているのか。



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