寄稿集「ハトリーズとぼく」の冊子版ができあがった。
去年、第1弾を作ったときと同じネットプリントサービスを使った。
今回も楽しかったというか、夢中の冊子作りとなった。
完成までのプロセスの一部を記録に残しておこうと思う。
(ちなみに以下の作業のほとんどはワードで、表紙のみパワポを使用。
最低限の環境でできる冊子作り、です。)
判型
このサービスのいいところは、判型(縦横の長さ)を自分で選べること。
A5サイズの規格は140mm×210mmだが、たとえば縦をちょっとだけ詰めるといったことをすると、本に個性が出てくる。
今回はどうしようと考えていて、ふと、『気が向いたらプラグ作り』の初版と同じ形にしようと思いたった。
あの初版は、縦をけっこう短くしたふしぎなかわいらしい形をしていて、本棚でも他の本より背が低い。
その隣にすっぽりおさまったら、と想像した。
これがきっかけで、今回の本は、ところどころで、かの名著の面影を借りるものになった。

並び順
文章の順番にはいちばん悩んだ。
ネット版は基本的に届いた順に紹介したが、もっと良い流れがあるような気がして、タイトルが並んだワードのページとにらめっこしながら、あーでもない、こーでもないと入れ替えを試す。
そうするうち、もともとバラバラに集まったこれらの記事が、影響を受けた羽鳥さんの仕事別に分けられるように思った。
「第1章プラグについて」などと、章タイトルを掲げることも考えたが、そこまで縛りをかけると今度はひとつひとつの文章を型にはめすぎてしまう。
そこで、まとまりが切り替わるページに、見開きでイメージページを入れるに留めた。

柔らかいもの、芯のあるもの、ちょっと切ないもの、切れ味鋭いもの……いろいろな文がある。
ひとつひとつの文章が輝き、文章と文章が共鳴し、全体として音楽が聞こえてくる…そのもっともよい響きを目指しての順番決め。
そういうことが起きるのは、紙の本ならではだと思う。
フォント
今回、やってよかったことの一つが「MS明朝」の採用。
何年か前から、仕事などでは「游明朝」ばかりになってそれがあたり前だと思っていたが、昔のMS明朝に変えてみたら読みやすくなった。
游明朝を使ったレイアウトはすっきりする分、すました感じが強く出る。
MS明朝はもっと人間くさいというか、わずかなノイズがあってそれが安心感をくれるような気がする。
なお、福ピンクさんと私のは、フォントは游明朝を使い、2段組みで、背景にグレーを敷いて、長文レポートという性格にした。
文字組み
余白の取り方。文字と文字、行と行のスペースの違いで、読みやすさはもちろん、字面の印象もがらっと変わる。
集まった原稿との相性の問題もあるので、ワードでいくつかのパターンを試しながら詰めていく。
いい感じで組み上がってきて、ほぼ完成かも…というところまできて、寄稿者の日高シカさんから
「紙にするなら、できたら縦書きかな」
とメッセージがきた。
がーん。
たしかに縦書きは読みやすく、本らしくもなる。
ただ、今回はもともと横書きで書かれたもので、文章のリズムと合わないだろうし、仕上がりがよくならないだろう。
最初にそう判断して、横書きで作業を進めていたのだった。
断り文句を考えているうちに、「やってみようか!」という気になり、縦書きでレイアウトを組みはじめた。
上下の余白を多めに取って1行あたりの文字数を横書きと同等にした。
改行や段落変えを工夫すると、リズムの問題もクリアできそうだった。
数字や英字の表記の変更なども発生して大工事。
仕上がった冊子を見ると、もはや縦書き以外は考えられない。
読みやすいし、リズムもいいし、本をめくるという行為が意味深くなったような印象。
たいへんありがたいアドバイスになった。

年表
ネット版の「はじめに」に入れた「ハトリーズ関連年表」を再編集して冊子版用に作りかえた。
情報量がかなりアップ。
みなさんの文章に登場するプラグの名前を入れたかったし、「はじめに」を書いたときより自分のハトリーズの知識もぐんと増えていたのでそれを反映させた。
さすがにすべては網羅できないが、これで羽鳥さんの主要な活動を概観できるかと思う。
エッセイ集というのは、主観的な文章の集まりだと思われがちなので、こうした資料的性格のはっきりしたコンテンツがあれば、長く手元においてもらえるひとつの理由になるのではないか、という期待もこの年表に託した。

試し刷り
今回は、実物のレイアウトの雰囲気や、モノクロの画像の出方を確かめたくて、まずページ数を絞ったテスト版を注文した。
本作りでいう校正刷りの代わり。
データ製作上のミスに気づくことができて、それはよかった。
ただ、テスト版では写真がどれも重ために出ていたので、それを参考に全体に明るく色調整したのだが、仕上がりで思うようなものにはならなかった。
けっこう残念だったが、はてどうすればよかったのか。
ネットプリントの限界なのか、今後の課題として残る。
表紙

「ハトリーズとぼく」のタイトルは、子どもが描いたのか?という感想もいただいた。
AIにイメージを伝えて作ってもらったら、それっぽいおしゃれな感じのロゴが出てきて、きれいにはまった。
が、必然性がないし、反抗したくなってきて、別のデザインを手書きでやってみることにした。
それしか方法が分からず、マウスで震える手元と戦いながら、繰り返し繰り返し描いた。
このタイトルデザインについては、もう良いとか悪いとか分からない。
メインビジュアルにはカズーさんの写真を加工して使わせてもらった。
写真としてとても素敵だし、このハンサムボーイの姿は、今回の本のひとつのシンボルだとずっと思っていた。
つまりこの本は、ハトリーズを受け取った側の物語だ、ということである。
ルアー(や、その他の表現物)は、使い手によって完成する、と言い換えてもいい。

ほかにも色々あるが、だいたいこんなところ。
寄稿してくれた方に喜んでもらえるように、というのは第1弾と同じ気持ちだったが、今回は「ハトリーズ」という具体的で偉大なテーマがあったので、みんなでハトリーズという問いに挑戦しているような気持ちというか、先人たちに向けたよりよい捧げ物になるようにと、夢中で作った。
全部で88ページ(縁起がいい)。
届いた冊子を見て、先に触れた印刷のことをはじめ、改善点もいろいろと気づいた。
それでも、いい本になったと思う。
こんなことは2度とできない。
などと思えるのが本作りだが、偶然に集まった文章に込められたたくさんの熱意が、このような形になってよかった。
寄稿者のみなさんお疲れさまでした。