釣り(2022年7月9日)

ぽーる、ホソミ所長と釣り。

会うなりポールが
「ダシヨとはすごく久しぶりな気がする」
「前のJUNKYS JUNKYS以来?2年、3年ぶり?」
というが、昨年11月にこのメンバーで釣りに行っている。

 あのときの釣りは印象的なことがいろいろあったので、トピックを携帯にメモしていたことを思い出し、車の中で読み上げる。
……反応がにぶい。
自分も半分くらい覚えてない。
この歳になってくると、会話も、記憶の不確かさや、時間の流れの不思議さ、わが身の不甲斐なさを披露する、老人会のような様相を帯びてくる。

コロナの影響か、ここ数年はどこも釣り人が増えているように思う。
向かう先のダムも先行者がいるだろうなと想像していた。
着いてがっかりするのは避けたいので、過度な期待はしないように気持ちを抑えておく。
いざ到着すると誰もいない。
すでに夜は明けている。
い、い、急げ~!すでにプライムタイムははじまっている!

と叫ぶことまではしないものの、態度が急変して二人をいぶかしがらせる。
君らには分からんだろうが、ここに通っている私には分かるのじゃ。
今。
すぐ。
漕ぎだして対岸に向かわねばならない。

所長のカヌーをおろし、セッティングする。
僕が座る真ん中のスペースは腰掛けのフレームがないため、組み立て式の椅子を所長が準備してくれていた。
背もたれもついている。
この椅子がかなりでかく、脚が安定せず、座面も高い。
慣れないグラマンだし、揺れが増幅されるみたいでめっちゃ怖い。
フッキングした瞬間に後ろにひっくり返る光景が、バスの下アゴを掴むと同時にぐるんと湖面に吸い込まれる未来が見える。

日ごろ「あそこのポイントがいいよ」みたなおせっかいは人に言わないように心がけているはずなのに、同船者たちにしかるべき緊張感が足りないと焦り、つい言ってしまう。
10分ほど釣りしてなにも起こらず。
椅子も大丈夫そうで、ようやく気持ちが落ち着いてきた。
あとになって所長から釣りはじめのあたふたを指摘され、笑われた。

ロッドはハトリーズスティックのMLをフェルール仕様にしたものを付けてきた。
リールは4500C、グリップはフェザーウエイトのライトウエイトに、藤原さんが装着したというコルクがついたもの。
ラインはナイロン14lb。

こないだワダちゃんに、ロッドいっぱいもってるよな、と言われ、たしかにそうだと自覚した。
ダーターや抵抗の強いプラグ用のグラスロッドは決めているものがあるが、ペンシルベイトなどを使うロッドに決め手をかき、いろいろと試している。

ハトリーズスティックはティップが軽く繊細で、軽やかでややスピーディなプラッギングをイメージして持ってきた。
意外と重たいものも背負えるが、やはりというべきか、僕が使うプラグには、投げるのにも動かすにも全体にパワーが足りないような気がする。
しかしカヤックに乗って自分だけのペースで釣りをする分には、そのあたりを補いながら気持ちよく使えるときもある。

ロッドは何年経っても本当に分からない。
己の筋力、技術不足に加えて、ロッドに合わせるという意識が働くからだと思う。
キャスト以上にプラッギングの心地よさを期待しているからなおさらジャッジが難しくなる。
いつまでも基準ができない。

小柄な自分に合っているのは5.6ftだと思ったり、やはり6ftでなければ投げても動かしても手ごたえに欠ける、と思ったり。
ひと昔前の、重ためのグラスロッドが好きだけど、その時点でなにか間違いをおかしているのかも知れない(ちなみにこの日のハトリーズスティックは、重ためのグラスロッドとは違う、軽いグラスという認識)。
しかし同船者たちも、なぜかひと昔の重たいグラスロッドを好んで使っている。

それにしても反応がにぶい。
最重要ポイントであるはずのダムサイトも過ぎてしまった。

草が茂るブイまわりで、今だとビシューに結び変える。
形も色も、かなり不思議なプラグだが、首振りのフィーリングがよくて驚いて、そうなるとこの形にもちゃんと理由があるんだなと思えてきて、気に入っている。
特徴的な目玉はベルクロでとまっているので外せるんだぜ、と二人に見せびらかせようと無理矢理ひっぱったら、ベルクロではがれずに、目玉だけが取れてしまった。
真っ黒い闇に見つめられて泣く。
でもスペアが付いてるから大丈夫。

ダムサイトをすぎたあたりからポツポツと子バスのチェイスなどがではじめ、いい音がしたので後ろを振り返ったら、所長のロッドが曲がっている。
カメラを取り出そうとごそごそしていたら、「ああ~!」という声が響いて、プラグだけが帰ってきた。

私も持ってるエニードープ・ダスクライト103のTNK。
浮力のきいた、繊細なフィーリングがとても好き。
ひそかに現代版のビッグラッシュではないかと思っている。

バラした所長は、それでも満足、たまらないと興奮している。
気ままな彼が本心で喜んでいるのが分かる。
大学生のころ、ぽーるが「自分がバラしたと思ったらバラし」と言っていたが、「自分が釣れたと思えれば1匹」だと言えるだろうか。
そういう妄想的な心境のリアリティが、近ごろはよく分かる。

ぽーるはと言えば、昨年リリースされたやや小ぶりのファットボーイをずっと投げている。
さまざまにアクションを変えているのかも知れないが、はたから見てそれは読み取れない。
けっこうアグレッシブな首振りとダートを延々と繰り返しているように見える。
どうすればこんな風に繰り返すことができるのだろう。

風が強くなってきた。
風の当たらない、ブイの反対側を狙ってみようということで、正直実績はないが打っていく。

オレンジ色のブイの影に、オレンジのホローペイトが吸いこまれる。
ちょっとの間。
ゴボンとポッピング。
またちょっとあけて、クイ、クイと、音のないターンをみぎ、ひだり。
ぼしゃ!と泡が立ってプラグが持ち上がった。
が、オレンジが視界から消えることはなかった。

完璧なプロセス、完璧なタイミングでのバイトだが、バスの食い方は精細を欠いていた。
バイト音、飛沫の上がり方、魚体の見え方、プラグの消え方。
ちょっと違えば、たとえ乗らなくとも大興奮だったに違いない。
しかしそのちょっとの違いで、心はどこか冷静さを保ったままとなる。

結局、所長の1バラシだけに終わった。
想像もしなかった未来だ。
ボートを上げて、所長の自作プラグを動かす。
リップのない3連ジョイントペンシル、通称ノーリップリンプ。
これがめちゃくちゃいい動きをする。
この勘どころの良さよ。

20年になる付きあいで、気兼ねなく一緒にいられると同時に、ぽーるにしても、所長にしても、こんな人物だったんだな、ということが新鮮な印象として感じられる。
みたいなことも思った。

帰り道に産直市場に寄り、屋外のテーブルを囲んで押し寿司を分けて三人で食べた。

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