季節にかかわらず、夜明けから日暮れまで水上にいるのがあたり前だったのは、いつごろまでのことだったろう。
長くても昼まで、という釣りがほとんどになった。
この日はお昼過ぎに合流してダムへと車を走らせた。
夕まずめに向かう釣り。
街を抜け、田んぼの景色のあとに、山々があらわれる。
その、カリフラワーみたいに盛り上がった緑の量感。
いつも通るのは夜中だから新鮮に目に映る。
ダムの水面は風で波立っている。
空は雲に覆われていて、思ったよりも涼しい。
湖に漕ぎだし、そのうちに止むだろう風を避けて、まずは川筋に入った。
風裏の穏やかな水面にプラグを滑らせる。
少しすると、青空になって午後の太陽が照った。
「夏って感じやねぇ」
と船頭がいう。
ほんとうにそうだなぁ。
よくぞ言ってくれた、と思う。
最初のリリースに比べてヴァンガードQは動かしやすくなったように感じる。
水をまとった鋭角なスケーティングを見せてくれる。
けどそのアクションだけでは納得味に欠けて、いろいろと試す。
できるだけスローに長くスライドさせてみたり、キュッキュッと横っ飛びするようなターンをさせたり、おじぎを強調してポコポコと音を出してみたりする。
このあたりの動きが、意識が前のめりになって楽しい。
川筋を進んでいくうちに夕方がせまってくる。
静かな湖面を泳ぐペンシルベイトの航跡。
ヒグラシの声が谷間に響く。
なんというムード。
絵になりすぎて、ちょっとエモさが過剰、みたいに思った。
最上流まで進んだが反応がなく、いよいよプライムタイムだとダムサイトを目指したが、風は収まらない。
いつ止むだろう、もう止みそうだ、いややっぱりまた吹いてきた、などと言いながら、暗くなるまで風は吹き続けていた。

この日、船頭さんがめずらしくダブルスイッシャーをただ巻きで使う時間帯があった。
テンポ良く投げては巻くを繰り返している。
途中、岸から水中に突きささった太い倒木の影にナイスキャストが決まる。
横目で見ながらテーブルターンの光景を思い浮かべていたら、ここでも、さささーっとストレートリトリーブさせたので「まじか」と思ってた。
釣りのあとの反省会の途中、「めっちゃターンさせたい気持ちを抑えて巻いていた」という話がでた。
倒錯というスパイスをきかせた、自分を深く納得させるためのゲーム運び。
話を聞きながら、リールのハンドルを巻きはじめる右手の、いつもよりこわ張った感覚をリアルに想像していた。
エゴサーチしてたら此処を発見しました。
猿モリタです。
色々あって、今はナマズ釣って遊んでます。
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