サーフェイスゲーム

penned by ヒデキ


ハトリーズは、ルアーの形をした思想だ。



ハトリーズが好きだというだけで、釣り人としての箔が付くとさえ思う節がある。
自分の釣りにおける美学のようなもの。
その根底には、確かにハトリーズがいる。

それはトップウォーターの世界の入口で出会った、「羽鳥静夫サーフェイスゲーム」シリーズの影響が大きい。

スロウに流れる音楽と映像は、子供の頃から数え切れないほど見てきたバス釣りの映像と似ても似つかない美しさがあって、「これだ」と思った。

オーバーヘッドキャストで長く引き伸ばされたナイロンラインが、船首と船尾から一筋ずつ。
それらが縦にさばかれる優雅なプラッギングによって、朝マヅメの水面でうねり、煌めいていた。

あのシーンを観ると、いつだって気持ちが高ぶる。

一方で、気づけば眠たくなっているのもお決まりだ。
それもあのシリーズの愛すべき点だと思っている。

作中から受けた影響は、見た目の美しさだけではない。

同船者を良き相棒として、釣りを二人で楽しむという尊さ。
新緑の眩しさに思わず「チクショー」と声をあげる無邪気さ。
バスの反応に声を上げて喜び、本気で悔しがる純粋さ。

釣果に拘りすぎることに疲れや疑問を感じていた当時の自分にとって、それはこの先も楽しくバスと向き合う道を示してくれたように思えた。

だから自分にとって、トップウォーターのスタイルを指す言葉としての「サーフェイスゲーム」は特別であり、美学でもある。


ところで年に数回、スミスのロッドにハトリーズのプラグだけで遊ぶ日をつくっている。

2025年、そのうちの一回が、友人の小学生の息子との釣りだった。

蝉がやかましく鳴く七月の昼間、小さなダムをのんびりと流す。
実績のあるポイントが来るたび彼に投げるよう促していたが、自分の狙いだった岩盤地帯が近づいてきた。

垂直な岩盤と張り出した岩にオーバーハングが絡む、いかにもな場所。
おそらくバックハンドで低弾道に入れるのが定石だろう。
けれど今日は、スミスの6ftグラスロッドにセミダブルのグリップ、ハトリーズで遊ぶ日だ。
いつも以上にオーバーヘッドに拘りたい。

張り出した岩から距離を取る形でボートポジションを取り直す。

ハングぎりぎりをかすめ、最奥とまではいかないが、張り出した三角形の岩に沿ってエイビルスピリットウーマンがシェードの中へ着水した。

ススーッ……ポヨン。。

難度Aとカタログで評された、スライド途中のノッキングと揺れを見せた瞬間、黒い影がたまらず岩陰から突進してきて、水面が割れた。

「よぉ見ときなよ!良いサイズ!なかなか見れへんで!うぉー、跳ねる!カッコいい!引く引く!」

前で落ち着いた彼を差し置いて、自分の方がイメージ通りの展開に興奮していた。


ちなみに彼も無事に一匹キャッチしてからはすっかり興奮し、あとで合流した彼の弟に得意げになっていた。
先に釣られて悔しかったのかもしれない。
そうだよな。
すまん。

この先、彼と並んで、夏休みの宿題ではなく仕事や家庭の話をするような日が来るのなら、この文章を見せて、また同じ船に乗れたらいいと思う。

その時間を、どう過ごしたか。
思い出す会話や景色があるかどうか。
一匹の魚を、彼と共有できるかどうか。

サーフェイスゲームとは、たぶんそういうことだ。


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