エイビルスピリットウーマン

penned by スペンサー☆フジモト

このプラグに惹かれた最初のきっかけはそのコンセプトだった。
どこに書かれた文面だったか思い出せないけど、こう書かれていたと思う。

泳がすことはおろか動かすことすら難しいクワイエット。
スライド中にノッキングを起こすことができれば合格。

何このプラグ…。
えげつないスタイルしたシェイプだな。
どうしてそんなプラグを販売するんだ?
そんなに難しいのか?
どのくらい難しいんだ?
ノッキングって何なんだ?
いやいや、なんでこんなプラグ作ったんだ??

使ってみたい。
衝撃的だった。

今よりもっとスレてない、今よりもっと無知だった、今よりもっとピュアなバスボーイの頃の自分は、性悪女ともとれる名前の付いたプラグに心を奪われた。
すぐさまヤフーオークションで検索。
運良く出品されていたので即入札。
落札日まで4、5日ぐらいあったけど終了まで誰とも競り合わず落札できた。

数日後、自宅にデリバリーされてドキドキのご対面。
宛名の書かれた封筒を破り、ぐるぐる巻きにされたプチプチを強引に、時に優しく剥ぎ取った。
「はじめまして」
とは言わなかったが、実物を手に取りいろんな角度から眺め回したりして、プラグが手に入った喜びを堪能した。

その週の土曜日、タックルボックスに鎮座していただき、まだ日の出まで時間のある暗闇の中、車をダムへと走らせた。

カヌーに荷物とドキドキワクワクを積み込んで、目星をつけていたポイントへと進ませた。
日の出から少しして、周りの風景とベタ凪の湖面がハッキリと見えるようになった頃、タックルボックスからつぶらなグラスアイの瞳がこちらを見つめている。
僕は迷う事なくそのプラグに手を伸ばす。
14グラム前後のプラグには少しハリのある6フィート半、グラスのライトロッド。
伸び過ぎないしなやかなナイロン8lbに結んで、なだらかなガレ場の岸際へ、ボートポジションをできるだけ離してロングキャスト。
プラグが弧を描いてとんでいく。

着水してしばらくして波紋が消える。
自分の周りの世界の音まで消えた。

僕は右手でリールのハンドルを少し回して、緩めすぎず張りすぎないラインスラックを作り、パーミングした手はロッドのティップを上へと短く、強いとも弱いともいえない微妙な力加減で手首を動かした。
その瞬間。
説明どおり、プラグは首を片側に向け滑らかに泳ぎだし、頭を上下に揺らしながらその後ろに余韻のような引き波を創り出した。

「素晴らしい…最高じゃないか…」

なんてことは一切なく、遠く離れたプラグは僕に向かって文字通り棒切れのように一直線にロングスライド。
僕はしばらく無言のままつぶらな瞳のエイビルと見つめ合っていた。

僕の中で羽鳥さんから受け取ったつもりでいるメッセージは、生み出されたプラグに対して使い手が想像力とアイディアと技術と経験と工夫を凝らして、プラグの持つ個性をたくさん発見して、その人なりのプラッギングでバスフィッシングを楽しんで、プラグを創った製作者の世界を感じとってほしい。
ということなんじゃないかなと思っている。

これより後の、それなりに操れるようになるまでの経緯、バスをキャッチするまでの話はまた別の機会に。



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レイチューン・ブロスドライブ

RayTune ”BRO’S DRIVE”
110mm・5/8oz

レイチューンのブロスドライブ

レイチューンは四国香川県のハンドメイドメーカー。

今(2025年)は渓流のミノーイングが一般的になり、多くのハンドメイドミノーが作られるようになった。
しかし2000年ころ、ハンドメイドミノーといえば湖のマス用やバス用に作られたものがほとんどで、流域での使用を想定したものはブラウニーやチップミノー、ツインクルといった量産ルアーとごく一部のハンドメイドくらいしか目にする機会がなかったように思う。
そのなかで、レイチューンは当時から「リバーチューン」をうたい、バルサミノーならではの運動性能を追求していた。

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