penned by fraternity
僕は世間でいう「トッパー」ではない。
どんなルアーで釣るかよりも、「今日の魚はどうすれば釣れるのか?」を考えて釣りたい。
好きなルアーを挙げるなら、スピナーベイトが一番で、次いでフローティングのジャークベイト、そしてディープクランク。
もちろん、状況次第ではライトリグも使う。
表層からボトムまで、あの手この手で魚を追いかけるのが楽しいのだ。
そんな僕にも、気づけばつい頼ってしまうトップウォータープラグがある。
それが、「ラウダー70」だ。

ラウダー70は、並木敏成氏が代表をするO.S.Pから生まれたポッパーだ。
70mmで12g、ミディアムパワーのベイトタックルでちょうどいい感じに扱える。
特徴的なのがそのカップ形状。
上端が少し伸びており、水を掴み「ボワン」と、低く太い音を響かせる。
その響きは水に溶け込みつつもどこか曖昧な違和感を残す。
それがバスにどう作用するのかはわからない。
でも、彼らがその響きに惹きつけられる瞬間があることを知っている。
このルアーに助けられた、とある夏のできごとを紹介する。
山間部の小さなリザーバー。
日差しは肌を突きさし容赦なく水分を奪う。
草木はこんがりと日焼けし、岸際の水は鈍く淀んでいた。
それなのに水は限りなく透明に近かった。
こんな状況のバスはどうしても気難しく、釣りは難解になる。
どんな精巧なライトリグを繊細に動かしても「またそれか」「もう飽きたよ」と、目を向けてもくれない。
そんな中オカッパリをしていた僕は、なんとなく「もしボイルがあったら試してみよう」とラウダーを結んだ。
試しに手前10mほどにキャストし、ボワン、ボワンと音を出してみる。
すると、下流からバスの群れが遡上してきた。
驚いたことに、彼らはラウダーをぐるりと囲んだ。
その異様な光景は「覗くな」と書かれた穴の周りにたむろする野次馬のようだった。
ラウダーが手前に寄り過ぎたので、回収した。
するとバスたちは姿を見られていたことに気付き、一目散に沖へ逃げていく。
僕は「その反応が普通だよな」と胸のつかえがとれた。
しかしラウダーへの期待に抗えなくなった。
バスたちの上流側やや岸よりに再びラウダーを遠投した。
ラインを水に馴染ませ、ボワン、ボワンと音を響かせる。
沖へ逃げたバスたちが反転し、ルアーへと向かっていくのが見えた。
まるで、引力。
ラウダーの響きにはそんな作用があるのか。
バスたちは僕から遠ざかり、やがて姿は見えなくなった。
ラウダーが作る波紋だけが彼方に見える。信じて、響かせ続ける。
ステイ中にラインがスッ…と沖へ動いた。
フッキングを決める。
ラウダーが奏でた響きのように、魚の手応えもまた、太く重かった。
ラウダーに惹きつけられ、禁断の穴を覗いてしまった魚は2kgにせまる魚だった。
繰り返すが、僕はトッパーではない。
でもラウダー70は、いつも手元にある。
もしかしたら僕もまた、その引力に惹きつけられているのか。
Twitter(X):@MUBFraternity
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