盟友(と思っていただいてありがたい)であり、shallowtrickの本家である猿さんが、私の「ブラックバスの現在地」を読んでインスタグラムに文章を書いてくれた。
このとても素敵な文章を、読んでない人には読んでほしく、そしてこのページに残しておきたくなったので、許可を得て転載します。

石積みの対岸の際に一箇所だけ小さな木が生えている。
そのそばを狙って投げたヴァンガードは、50cm以上離れたところにポチャンと着水した。
それでも悪あがきで、右に小さく、左に大きくスケーティングさせて、最初に狙った所になるべく近づける様にしていると・・・
とある日の旧吉野川での思い出。
とても記憶に残っているバス釣りの記憶。
盟友(と僕は思っているが、彼はどう思ってくれているんだろうか・・・)ダシヨ君 が彼のホームページに、「ブラックバスの現在地」と言うタイトルの文章をアップロードしてくれた。
ノーザンラージマウスバスや、フロリダラージマウスバス、スモールマウスバスなど、日本でブラックバスと総称される魚の日本における現在の状況とそれに至る経緯をわかりやすくまとめてくれているので、是非彼のプロフィールからリンクを辿って、一度目を通してみてほしい。
特定外来生物として認定されるまでの顛末を読んでいて、すごく違和感を感じたことがある。
それは、指定に対して賛成派と反対派で議論がなされているという点だ。
勝ち取るべき答えがすでに決まっていて、お互いその結果が得られる様に足を引っ張りあっているだけで、何の議論もなされていない。
魚類の命、その魚に関わる人々、それらすべての物事に対して、これでは勝ち負けになってしまうではないか。
全てを俯瞰して、どちらかの立場に偏らない目線で持って決定されるべき事柄ではないのか・・と。
まぁもちろん、お前の言ってる事は脳ミソお花畑の寝言で、そんな理想論何の足しにもなりはしない、と、そういう指摘は当然予想される。
が、だがしかし。
ニュートラルな立場から何にも左右される事なく、この問題に真っ向から向かうことができなかったからこそ、たいして何にも考えてなさそうな大臣の鶴の一言で納得のいかないまま指定され、そのままうやむやと、どっちつかずの現状が続いてしまっているのではないのだろうか。
僕が一番疑問なのは、バスに捕食される生物の事ばかり取り上げられている事なのだけれどこれもどうなのか。
普通に考えて、食物連鎖のピラミッドの上位にいる生き物の個体数は、その餌となる下位の生き物の個体数で決まる。
なので、新たな魚食魚がその生態系に投入されて一番影響を受けるのは、元からいた魚食魚(琵琶湖であればビワマスやハス、ビワコオオナマズなど)のはずなのにそのことに関しては全く情報が出てこない。
研究者VS利用者という図式で、特定外来生物に指定するか否かを争っているわけだが、お互い自分たちの望む結果に都合が良い研究結果を提示して、相手の話は頭ごなしに否定しているだけに見える。
結局本質は何も見えてこない。
小学生の頃から感じていた、人類に対する絶望感を思い出す。
あえてでも・・と、この話の感想を続けるなら。
僕が小学生の頃の近所の川は、もっと汚かった。
ヘドロの臭いが常にしていたし、今よりもっと大量のゴミが浮かんだり沈んだりしていた。
スクーターや自転車、ベビーカーなんかが川に捨てられているのもしょっちゅう見かけた。
小さな町工場から排出される排水で、水の色が日によって真っ赤だったり黄緑だったりしたこともある。
そこから比べれば、随分と水質は良くなった様に見えるし、臭いもそれほど気にならなくなった。
(まぁ、未だに川はゴミ捨て場的な考えの人間も多数居て、わざわざ深夜に川にゴミを捨てに来るのを何度も目撃しているが・・・)
少しづつは改善されているのである。
そのやり方は今はあまりにもお粗末で、何の利益ももたらさない様に見えるけれど、種の多様性を維持しなければいけないんじゃないかな?と、気付いて行動を始めたことだけでも、進歩だと思うことにしてみる。
異常な針葉樹の植林を再整備して里山を再生し、保水力を高めた山地で、河川の造成の自由度を高め、排水能力だけを追求した三面護岸を、生物の住める川に戻す。
もう一段階上位のインフラに整備し直すことで、国内経済に活気を与え、未来への希望が見えない現状を打破するきっかけに・・・なんて、夢物語も過ぎるか。
よく、科学技術の進歩を悪と捉えて、これ以上進歩する必要はない、昔の素朴な暮らしが良い、みたいな事を言い出す人がいるが、それは大きな間違いで、今の人口を維持しつつ、環境負荷を素朴な暮らしの頃のレベルに下げられるだけの技術的進歩が必要なのだと思う。
ヒトにはまだ、その能力はない。
ただ、未来にもそれはない、と断言する事は出来ない。
あるいはこの、「種の多様性を守ろう」というスローガンの先に、ブラックバスと我々ヒトと、環境の三者が円満に存続できる未来が待っていないとは、断言はできないのだ。
・・・・・。
ロッドワークに忠実に、外したポイントへと近づくヴァンガードが、突然水飛沫に呑まれた。
ラインを伝わる魚信と共に、ロッドが美しい弧を描いた。
右手の親指がバスの下顎を掴んだ時の、あの感動を、鮮明に覚えている。
あの感動を、僕が忘れる事はないのだ。